つなぐ会とは

  日本音楽の研究と教育をつなぐ会(略称 つなぐ会)は、日本音楽の将来のための教育の役割を重視し、研究者がコーディネーターとなって、演奏家、学校、教育行政のネットワークの構築をめざしています。

  これまで[教員の養成・採用・研修][専門家の活用][幼小教育の連携]の3チームを組織して研究と議論を重ねてきました。これまでの活動を踏まえ、3チーム横断による[しょうチーム]を新設し、伝統音楽の表現の特質や伝承方法、日本語と音楽の深い関わりなどの視点から、音楽教育における「唱歌を用いた指導の在り方」についての研究を進めました。その成果として、平成29年度にDVD付教材「唱歌で学ぶ日本音楽」を作成しました。今後は、この教材が広く活用されるよう、ワークショップを企画、実施していく予定です。

  なお、本会の合同研究事業は、平成27~30年度伝統音楽普及促進支援事業に採択され、文化庁の支援を受けて取り組んでいます。

2020年3月31日火曜日

2019年度日本音楽の教育と研究をつなぐ会ワークショップⅡ「唱歌で学ぶ日本音楽 唱歌を活用して伝統音楽を学ぼう-能-」の報告

2019年度 日本音楽の教育と研究をつなぐ会ワークショップ

唱歌しょうがで学ぶ日本音楽」 

Ⅱ 唱歌しょうがを活用して伝統音楽を学ぼう-能-

日時 : 2020年2月8日(土)
14001800(開場1330
会場 : お茶の水女子大学 
Student Commons2階 マルチパーパス1

 Ⅰ 授業実践例紹介
第一部「授業実践例紹介」では、宮城教育大学附属中学校音楽科教諭板橋薫先生と北海道教育大学附属釧路中学校音楽科教諭齊藤貴文先生が、『唱歌しょうがで学ぶ日本音楽』を使った授業について発表しました。板橋先生は、「能の魅力を味わおう」という題材名により2年生を対象として8時間の授業を行い、唱歌を通して楽器の特徴を体感した生徒たちが、囃子の音楽とその場面との関連について語ったり、表現の工夫を交流したりするプロセスを紹介しました。齊藤先生は「能の世界に飛び込もう」という題材名により3年生を対象として4時間の授業を行い、最終的にアイパッドを使って外国の人に能を紹介するリーフレットを作成することで、日本文化としての能への理解を深める活動を紹介しました。いずれの実践においても、演劇としての能のよさや面白さに生徒たちが気づき、思考力・判断力・表現力を高めつつ、主体的に表現したり伝えたりする活動への拡がりが見られました。参加者からは、「二つの実践報告があって、考える材料をいただいた」、「生徒の反応がよくわかり、唱歌しょうがの具体的な授業の目標の参考になった」、「板橋先生の授業構成(組み立て方)がわかりやすかった。齊藤先生の実践ではICTを用いた授業で、今後の指導の参考になる」などの感想をいただきました。 

板橋薫教諭

齊藤貴文教諭

Ⅱ ワークショップ 
第二部のワークショップでは、能楽師シテ方小早川泰輝師、笛方藤田貴寛師、小鼓方飯冨孔明師、大鼓方大倉慶乃助師、太鼓方林雄一郎師のご指導のもと、唱歌しょうがの講習を行いました。呂中干りょちゅうかん形式の舞の能管の唱歌しょうが、〈早笛はやふえ〉の能管の唱歌しょうが、《船弁慶ふなべんけい後場のちば「そのとき義経少しも騒がず」の謡と小鼓・大鼓・太鼓の唱歌しょうがに挑戦しました。そして最後に、唱歌しょうがを能楽師の皆様の演奏と合わせて唱えました。参加者からは「唱歌しょうがを唱えることで、音楽の捉え方が深まり、舞と音楽が繋がった。」「伝統芸能に音楽から入っていくことの面白さを見出せた。」などの感想をいただきました。

笛方 藤田貴寛師

Ⅲ 実演
第三部《船弁慶ふなべんけい》実演では、第二部の講師に加えて、能楽師シテ方長山桂三師、武田祥照師、長山凛三師が新たに加わり、前場の〈中ノ舞ちゅうのまい〉と、後場のちばの演能を鑑賞しました。第二部の唱歌しょうがの講習で学んだ呂中干りょちゅうかん形式や〈早笛はやふえ〉がどのような場面で使われているかや、前場と後場のちばを比較する視点を確認しました。質疑応答では、能楽師の先生方から、唱歌しょうがや舞について、さらに能の魅力についてお話をお伺いしました。参加者からは、「一流の先生方による実演が大変贅沢な時間、かつ演じ手からの生の声が大変役に立った」などの感想をいただきました。